川喜多喬&アソシエイツ

川喜多喬
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その日暮らしと一日暮らし プリント
水上勉『一日暮らし』が古本屋で10円で売っていたので買ってきて一日読み暮らした。 一日暮らしとは禅宗の有名な坊さんの言葉らしいが、明日を思い煩うことなかれ、と同じである。が、その日暮らし、とは違うらしい。とはいえ、その日暮らしに他目で見えぬこともないだろうし、そう見えて悪いことではない場合もあるだろう。その日暮らしで困る人もいれば、他方では、それこそが理想だと自ら思える人もいる。いろいろですね。

さてその10円は、学生時代に買った専門書10冊ほどを持ち込んで相殺した。当時は1000円でも高い本だと思って買ったが、今のカネでは5000円はするだろう、ただし物価にスライドして高くなるものではない、むしろ逆に学術書はどんどんタダに近くなる、ってことがわかった。今や1冊1円である。5万分の1、と見るべきか。1を5万倍に誤解して若い私は読みふけっていたのか。その日暮らしの時代は良くても、あとから反省すると悲しいから、そうすべきものではない。

処分している本の中でも綺麗なものを持ち込んでそれであって、だいたい私の本は書き込んだり破ったりするので古本屋でも売れず人にあげるには書き込みが邪魔になる(馬鹿、阿呆、と書き込んだものを見られるのはやはり恥ずかしい)。ということで一昨年から3千冊は再生パルプへと溶かされたのである。自作自演の焚書である。よくもまあ無駄なものを抱えて生きてきた人生を葬ると思えば、自作自演の坑儒にほぼ等しい。一日ごとに必要なものだけを図書館にて読んでおけば、どれほどのカネが残ったであろうか。しかし、かく、どれほどのカネがいずれ手元に残るか、と考えることがあれば、それまた一日暮らしの思想に反するのであろう。どだい、こういう駄文を書いて翌日以後にも遺す、ってのが、やはりその思想に反する。
だから一日暮らしの人は、誠に立派であると思う。

10冊の本が抜けた本棚のところに水上勉のその文庫本を入れたら、寂しげに穴があいている気がしたので、9冊もってきて隙間を埋めた。売れ残りの自著9冊ある。もちろん数百冊ある。パルプに溶かして再生すべきである。輪廻転生、とはそういうことだ。
最終更新日 ( 2010/02/23 Tuesday 18:19:20 JST )
 
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